この業界にいて、最も「無意味だな」と思う仕事があります。
「伝票の消費税丸め誤差対応」です。
売上伝票、請求書、POSレシートなどのプログラムにかかわったことがある技術者であれば必ず経験しているでしょう。
合わないんですよ数字が。合うわけないんです。
例えば外税方式で売上伝票毎に消費税丸め計算を行い、数か月に一度、合計金額の請求書鑑を作成するような場合、合計請求書の「消費税額」は「税抜金額」から消費税率で計算した値と異なります。
また、内税方式の場合は商品ごと(明細一行ごと)の税抜売上金額を正確に算出することができず、「商品別売上集計」の税抜き合計額は「全社税抜売上合計」と一致しません。
そのため、従順なITエンジニアたちは、「架空の明細行を一行追加して調整」とか、「請求書の一番最後の行に消費税差額を加減算」とか、「言うのは簡単だけどさ…」という無茶なロジックのプログラムを涙ぐましく書いたりしてきました。
結果、「数百万円の請求書の消費税額が1円違う」などのクレイジーなバグ指摘とか、その修正のための残業とか。(残業代いくらだ?)
もう本当に、この国の几帳面さときたら…
軽減税率が導入され、インボイス制度が出来たことで事態はさらに悪化。内税外税混在の場合など、本当にうんざりするほどのプログラム分岐です。
で。
なにより一番のポイントは、
「消費税丸め誤差対応は企業会計にとってあまり意味がない」
ということなのです。
インボイス制度で一部「積み上げ式」が認められるようになったとは言え、企業が国と自治体に支払う消費税額の計算は基本的に「年に一度、決算時に税込金額で集計してから一括割り戻し」なのです。
明細ごとの1円誤差など、元からどうでも良いのですよ。
えっと、あの苦労は何だったの…?
いえ、私が言いたいのは決して愚痴ではありません。
「ITエンジニアたちはもっと世の中のことを広く知ろう」
ということです。
そして、
「ITエンジニアたちはもっと物言おう」
ということです。
世の中の制度に対しても、提示された仕様に対しても。