18年くらい昔の話です。
その日は、中堅飲料メーカーの受発注配送売上管理(つまり基幹システム)の、本稼働初日でした。
ホストコンピュータからの切り替えを、どういうわけか創業間もない当社のような弱小企業が受注したのです。
一般に、日配品業界(受注~出荷を毎日繰り返す流通業界)の基幹システムは、いわゆる並行稼働や段階的リリースがとても困難です。
毎日扱う入力データの種類と量が多すぎて、とてもじゃないけど「しばらく2重に入力して」が現実的ではありません。
また、受注~出荷~売上が一蓮托生で毎日動きますので、機能や得意先ごとの段階的リリースも難しいのです。
なので、ビッグバンリリース。
前日の夜に直前までのデータを移行し、当日は朝から全ての機能を新システムで動かします。
熟練した複数の作業者が手入力する受注データは1日あたり合計数百件以上。
大手量販店からの受注データは電話回線(!)を使って電子データとして大量に受信します。
この電子データがまた曲者で、各社各様に設計されたファイル構造を正しく受注データに変換して取り込まなければいけません。
テストもリハーサルももちろんしましたが、本稼働はまた別です。
何が起きるかわかりません。
というか、絶対何か起きます。
はい。起きましたいろいろと。
手入力では移行したマスタデータの桁数ずれによる入力エラーが発生、瞬時にデータ修正して再入力してもらいます。
受信データの中には想定外のエラーデータが紛れ込みます。データの特定とプログラム修正と再取り込みを数分以内に行います。
一番青くなったのは、ある量販店向けに規定のタックシールを印刷しなければならないのですが、ラベルプリンタがうんともすんとも…
急いでメーカーに電話して初期設定を一部修正して印刷できたのは、トラック出荷時刻の数分前でした。
生きた心地がしない一日が終わりかけ、ようやくすべてのデータを処理し終わったときに気が付きました。
「あ、俺、朝から何も口にしていない…」
(後編につづく)