(前編からつづく)
その間、新システムが出力したデータをもとにトラックが続々と出荷していきます。
「あの出荷、大丈夫か…?」
基幹システム入れ替え当日の出荷データです。
全てが正確に処理されているとは限りません。
配送漏れや誤配送を、顧客も十分覚悟していました。
配送先からクレームが来るのは翌朝。
翌日は朝から各顧客の担当営業の人々が緊張して電話の前に座っていました。
電話、鳴りませんでした。一件も。
出荷データのバグ、ゼロ。
すごいでしょ。当たり前か。
ここで、それまで不安一色だった顧客のシステム担当の方々からの我々の評価が一変。
「君たち、なかなかやるじゃないか」って感じで視線が急に優しくなりました。
「創業したての小さな会社」が「顧客から全幅の信頼」を得ることができたのです。
そして、この日から私自身の「情報システム感」や「顧客感」みたいなものが変化を始めました。
昔、まだ小さな開発会社の従業員だった頃、ある人にこう言われましたことがあります。
「最大の味方は、顧客だ」
情報システムの構築には困難やトラブルが付きものです。
顧客からは様々な、時として無茶な要求もあります。値引き交渉だってあります。
でも、プロジェクトを誰よりも成功させたいのは他ならない「顧客」自身のはずです。
だから、我々の最大の味方は顧客なのだ、と。
正直その時は「そう言えばそうだな」くらいにしか思いませんでしたが、このプロジェクトを境に、私はそのことを心の底から理解できるようになりました。
実はこの基幹システム構築プロジェクト、切り替え当日だけではなく、それ以前もそれ以降も本当に色々と大変でした。
その様々な局面で、「同じ方向を向き、一緒に考え、共に問題解決してきた」のは、開発チームよりも、むしろ顧客だったのです。
最大の味方は、本当に顧客でした。
「顧客と同じ方向を向き、一緒にプロジェクト推進する」ことで顧客から「信頼」を得る。
我々の仕事というのは、つまりそういうことなのだと、私は本気で考えています。
(カッコつけ過ぎました?)