私が本格的にこの業界に入ったのはわりと遅く、二十代後半でした。
都内のとある小さなソフトウェア開発会社に未経験で中途入社したのが最初です。
当時、右も左もわからない私が最初に配属されたのは、某大手SIerが進めるプロジェクトでした。
さまざまな会社から作業現場に集められたエンジニアの数は総勢100人以上、かなりの大型システムです。
そこで約1年。下請けエンジニアとして初めて「情報システム開発」の仕事をしました。
もちろん勉強になりました。
開発言語や品質管理手法など、本当に色々なことを学ばせてもらいました。
そこは感謝していますし、私のITエンジニアとしての「原点」みたいなものがそこで作られたことは事実です。
(楽しかったかは別…)
その後、その会社ではいわゆる「SES」での仕事が続きました。
一番人手が必要な「開発工程」で作業現場に送り込まれ、一段落すると契約期間終了、次の現場に転属されます。
「開発工程(下流工程)」が始まる頃に集められ、終わる頃に引き上げる。
開発工程の前も後も見ることすらない。
それが、小さなソフトウェア企業のSES契約を前提とした仕事でした。
会社はひたすら「現場に人を送り込む」ことに注力します。
数年経つと、そんな仕事の仕方に疑問を感じるようになっていきました。
すでにアーキテクチャも開発プラットフォームも設計も決まってから参加、
その良し悪しに口をはさむ余地などなく、作成したソフトウェアがその後ユーザに使われているところを見ることもない。
本当にこのままでいいのだろうか
それが、私が次のスタートラインにつくことになる発端の思いでした。
そして今、その判断は正しかったと考えています。
その後、開発工程前後の様々な出来事や、「作る」という以外のビジネス要素、広報、営業、法規などについて、良い点も悪い点も全部ひっくるめて見ることで、当時の環境では考えられないほどの大きな視野を手に入れたのですから。