当社もおかげ様で20年以上事業を続けられていますが、IT業界に限らず、商売を長続きさせるための神髄は、俗にいう「三方良し」の精神だと私は考えています。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」というあれですね。
売り手良し:売り手が正当な利益を手にすること。
買い手良し:買い手が価格に見合った財やサービスを受け取ること。
世間良し:それが本質的に「良い」取引であり、社会の発展に貢献するものであること。
特に3つめの「世間良し」が重要です。
「世間良し」が成立していれば、どれだけ多くの利益を得てもその商売は称賛されるべきですし、逆に成立できない商売は、すぐ世間に後ろ指刺されて継続できなくなります。
ところで、どういうわけかIT業界の商売には未だに「売り手よし。以上」とか、「世間良からず」みたいなのが散見されます。残念ながら。
見た目だけは派手なプレゼンテーション資料をみて高額な製品導入したのに、結局できるようになったのはEXCELにコピペするための元データ取得だけだった「データ分析システム」とか、法改正に伴って必要になる業務手順の変更を、そこまでしなくてもいいのに不安をあおって業務システムの新規導入を促すようなTVコマーシャルとか。
昔に比べればかなり減ったとは言え、なぜまだこんなことがまかり通ってしまうのでしょう?
その原因の一つとして、「新しい専門技能が必要な仕事」であるが故のおごりというか、勘違いがあるような気がしています。
「ソフトウェア製品は作るのが困難な『特殊技術』の塊。高額で当たり前だ」
「買い手や世間に、この製品の機能の価値など、所詮わかるまい」
まあ、ここまではっきり言う人もいないでしょうが、IT業界人の心の奥底のどこかに、そんな感覚が現存しているのかも知れません。
でも、ITはもはや社会インフラの一部です。
IT業界も、長年続く他の業界(建築業界とか、製造業とか)と同様に、「ごく普通」の業界になったはずです。
「三方良し」の精神を体現できた企業だけが、生き残れる。
そんな時代に入った、というか、入らなければいけない、と私は考えています。