昔所属していた某弱小ソフトウェア企業は、いわゆるSES型の仕事がメインでしたが、いくつか請負開発の仕事もしていました。
この「請負開発による情報システム構築」という仕事、困ったことに
「いつ終わるのか」
が明確に見えないことが多い仕事です。
顧客との合意により納品、検収などの手続きが終わった後でも、各種バグ対応や「ちょっとここ変えてほしい」などといった残項目がいつまでも消えずに残ります。
ひどい場合はフル稼働でなくても何か月も作業が続き、だんだん
「これ、永遠に続けなければならないのかな…?」
とちょっと不安になることさえありました。
いわゆる「手離れが悪い」仕事なのですね。
(ちなみに私がこれまで関わってきたプロジェクトで、この「残項目」が完全になくなったことは、ただの一度もありません)
その後、独立したばかりでまだ法人化する前、いくつか「個人」としての仕事をしました。
その中で、わりと実入りがよかったのが情報処理技術者試験の対策講座の講師でした。
これ、一定期間の講座が終わってしまえば「残項目」が何もない仕事、つまり「手離れが良い仕事」の代表です。
当時の私にとって、この「手離れの良さ」はたいそう魅力的に思えたものです。
「期間終わってしまえばもう何も考えなくてよい」と明確にゴール設定できるからです。
思えば会社員時代にそんな「ピタッと終わる」タイプの仕事、したことありませんでしたから。
あれから20年以上。
今、私は思います。
「手離れが悪い」仕事こそ、大切で、ありがたい仕事であると。
以前このコラムでも書きましたが、ビジネス向け情報システムというのは「作ったら終わり」というものではありません。
その後も機能追加や修正などがずっと続きます。
顧客にそれをしっかり説明し、合意の上で保守契約締結して手厚くメンテナンスを続ける。それが顧客との間の信頼醸成につながり、企業としても安定的な売上になります。
「手離れの悪さ」は、ちゃんと向き合えば経営安定に大きく寄与するのです。