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弱小IT社長のひとりごと
~この国の若きITエンジニア達へ~

【第58回】ファーストユーザ

2024-07-08

起業直後のことですから、もう20年以上昔の話です。

 

当時、当社の製品がマイクロソフト社のインキュベーション支援プログラムに採用され、米国本社への招待ツアーに参加させてもらったことがあります。

 

その時、最初に出てきたセミナー講師は日本から米国ベンチャー事情の視察に来ている人でした。

 

その人曰く

 

「米国のベンチャー企業はとてもダイナミックにお金が動く。投資家の前でビジネスプランをプレゼンテーションするだけで、すぐに数億円の資金調達ができることすらある」

「ただし、ひとつだけかなり厳格な条件がある。『ファーストユーザがいること』だ」

「ひとりでもその製品なりサービスを購入したユーザがいるかどうか、それはかなり大きな判断基準になっている」

 

ということでした。

 

この「ファーストユーザがいるかどうか」は、それから20年以上経った現在、私自身もビジネス判定のとても大きな分岐点だと考えています。

 

あ、ファーストユーザと言っても、知り合いに頼んで買ってもらったとか、モニターの意味でとても安価に提供して意見を聞いた、とかではダメです。

まったく知らないユーザが、正規の金額で購入してくれたか、ということです。

 

この壁、想像以上に高いのです。

 

この壁を超えることなく消えていった製品やサービス、本当に星の数ほど存在したのではないでしょうか?

 

ちなみに自慢ではありませんが(いや自慢ですが)、当社が独自に開発したソフトウェア製品は2つほどあります。そのどちらも「まったく知らないユーザ」に購入して頂いております。

 

ファーストユーザに購入頂いた時は、本当に飛び上がるくらいに嬉しかったものです。

 

その時「この製品はいける!」と確信、それ以来、私は1秒たりとも自社製品の価値に疑問を持ったことがありません。

 

IT業界は新しい製品が作りやすい業界です。

 

作り出した新製品が「いけるかどうか」は「ファーストユーザが現れるかどうか」でかなり正確に判断できると、私は考えています。