起業直後のことですから、もう20年以上昔の話です。
当時、当社の製品がマイクロソフト社のインキュベーション支援プログラムに採用され、米国本社への招待ツアーに参加させてもらったことがあります。
その時、最初に出てきたセミナー講師は日本から米国ベンチャー事情の視察に来ている人でした。
その人曰く
「米国のベンチャー企業はとてもダイナミックにお金が動く。投資家の前でビジネスプランをプレゼンテーションするだけで、すぐに数億円の資金調達ができることすらある」
「ただし、ひとつだけかなり厳格な条件がある。『ファーストユーザがいること』だ」
「ひとりでもその製品なりサービスを購入したユーザがいるかどうか、それはかなり大きな判断基準になっている」
ということでした。
この「ファーストユーザがいるかどうか」は、それから20年以上経った現在、私自身もビジネス判定のとても大きな分岐点だと考えています。
あ、ファーストユーザと言っても、知り合いに頼んで買ってもらったとか、モニターの意味でとても安価に提供して意見を聞いた、とかではダメです。
まったく知らないユーザが、正規の金額で購入してくれたか、ということです。
この壁、想像以上に高いのです。
この壁を超えることなく消えていった製品やサービス、本当に星の数ほど存在したのではないでしょうか?
ちなみに自慢ではありませんが(いや自慢ですが)、当社が独自に開発したソフトウェア製品は2つほどあります。そのどちらも「まったく知らないユーザ」に購入して頂いております。
ファーストユーザに購入頂いた時は、本当に飛び上がるくらいに嬉しかったものです。
その時「この製品はいける!」と確信、それ以来、私は1秒たりとも自社製品の価値に疑問を持ったことがありません。
IT業界は新しい製品が作りやすい業界です。
作り出した新製品が「いけるかどうか」は「ファーストユーザが現れるかどうか」でかなり正確に判断できると、私は考えています。