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弱小IT社長のひとりごと
~この国の若きITエンジニア達へ~

【第65回】「要件」という蜃気楼(2)

2024-08-27

というわけで、

 

「蜃気楼を模型にしろ」

 

というくらい困難な「要件定義」工程なのですが、作業進めるにあたっては、別の観点の難しさもあります。

 

「話がかみ合わない」のです。

 

顧客企業と、IT企業の間で。

かみ合うはずないのです。少なくとも最初からは。

 

考えれば当たり前のことです。

見ている世界が全く違うのですから。

事業会社としての顧客企業と、開発会社としてのIT企業とでは。ものの見事に。

 

昔、結婚してまもなくの頃、妻と私で同じ新聞を毎日読んでいるのに、読んでいる「記事」が全く異なっていることに驚いたことがあります。

「新聞を読む」という行為は同じなのに、趣味や興味の違いから、妻と私は「全く違うもの」を読んでいたのです。

 

それくらい、立場や環境によって人の「世界観」は異なります。

 

ましてや、「ITの素人」対「顧客企業の業務分野の素人」です。

かみ合うはずなどございません。

 

そんな中、顧客企業との打ち合わせを進める上で、私が当社の社員によく言うことがあります。

(要件定義工程に限らず)

 

「顧客が言うことを、そのまま真に受けるな」です。

 

顧客企業は彼らの世界観の中で、出来る限りITサイドに歩み寄ろうとします。

 

そこでしばしば起きてしまうのが、「意訳」です。

 

それもかなり強引で、本来実現すべき「要件」から一足飛びに「実現機能」の詳細まで明確化されてしまい、肝心かなめの「要件」がかすんでしまうようなケースがあります。

 

それをITエンジニア側が真に受けてしまうと、「枝葉にこだわり過ぎて幹が見えない」状態から、最悪は「本筋と関係ない枝葉機能が独り歩き」することがあります。それもかなりの頻度で。

 

だから、要件定義を担当するITエンジニアは、「顧客の発言」の裏側にある「本当の要件」を探り出さなくてはなりません。

 

良い情報システムにするためにも、時には自分たちの身を守るためにも。

 

これ、百戦錬磨レベルの相当な経験積まないとなかなかできない仕事かもしれません。

ただ、常に「心がける」ことで上達のスピードは格段に速まるとは思います。

(続く)