私がその人に初めて会ったのは、まだ小さなソフトウェア開発会社の社員だった頃です。
ある会社の紹介で、従業員数10人程度の小さな食品卸業者の基幹システム(受注-発注-出荷指示-請求-入金の一連を管理するシステム)の構築を、所属していた会社が請け負うことになり、SES型の仕事に食傷気味だった私はその担当というか、完全に一人で構築することを会社に宣言、開発着手したのです。
(「一人で」って、今思えば無茶なことしたものです)
実はその頃、私自身はすでに独立することを決めていました。
そんなこともあって、私はこの仕事を所属会社に対する最後の「置き土産」にするつもりでした。かなり気合入れて取り組み始めたものです。
その顧客企業の社長がUさんでした。
始めて会った時にはすでに高齢の「おじいちゃん」でしたが、小さな会社のオーナー社長というのは元気なものでして、頭も体もまだまだしっかりしていました。
問題なのはその性格というか、独特の言動でして…
もともと大手電機メーカーの技師だったそうで、当時いわゆる「トランジスタガール」達を仕切って工場ラインを管理していたとこのことでした。
それが全く別の業界の会社社長になったのは、なにやら奇妙な縁から「売りに出ていた会社」を引き取った経緯があったらしいです。
ということで、昔取った杵柄の「計数管理」を、全く別業界から主張する「おじいちゃん社長」の話をヒアリング、という謎のプロセスからプロジェクトが始まりました。
しかしその後、この基幹システムは、当時バリバリのITエンジニア・プログラマだった私にとって、ひとつの「集大成」となり、「独立」「起業」の時期と重なった記念碑的な情報システム(というか、作品)になったのです。
で、このUさん、今でも私にとって「ユーザー企業とは」のモデルケースなのです。
良くも悪くも。
本当に
良くも悪くも。
どういうことかって?
詳しくは次回以降のコラムにて。